キャリアについて考えるきっかけ
野木村 茜
野木村 茜

私は、研修医の頃にガイドライン作成をしている先生の姿を間近で見たことや、海外研修を経験したことをきっかけに、自分の臨床的疑問を解決することの大切さを知りました。

エビデンスの質が高い情報を選ぶ方法を学び、実践し、いつかは自らクリニカルクエスチョンを解決できるような研究がしたい。大学ならきっと学術的なことを学べるはずだ、と思い、母校の研修プログラムでのレジデント生活を選びました。

実際にレジデント生活を始めてみると、大学病院らしい難症例も多く、また、特に難しい症例があれば、皆でカンファレンスを行って考える機会を持つこともしばしばでした。何かと文献を読む機会が多かったため、自然と論文を読むことに抵抗が少なくなったことを実感しています。

そして、大学病院の「人が多くて人間関係が希薄そう」との予想とは裏腹に、上級医との距離は思っていた以上に近かったです。日頃の臨床での熱い指導はもちろん、ひとりひとりが今仕事上で考えていることに真摯に耳を傾けてくださる先輩方のおかげで、人間関係に悩むことなく、毎日仕事に向かうことができるのはとても良いことだと思っています。

仕事が早く終われば夜桜を見に行き、学会の度に必ず飲み会を企画する私たちは、昨今流行の「ジョブ制」ではなく、「メンバーシップ制」なのだと思います。公私を通じて、多様なバックグラウンドを持つ先輩たちの今までの軌跡や、今取り組まれている研究のお話を聞くことができました。

多くの先輩たちとお仕事をしたり、お話しをしたりする中で、徐々に自分の中でやってみたいこともでてきました。800床を超える大病院で初期研修をした自分に足りないものは、「大病院ではない病院での勤務経験」であろうことを感じ、また小児麻酔の奥深さを知ったことで「いつか小児専門病院で小児麻酔の研修をしたい」と考えるようになりました。

このような考えを医局と相談した結果、今は大学病院を離れ、大学よりふた回り小さい市中病院での研修を続けています。今後は、小児専門病院での麻酔研修をした後、大学院に進学し、研究に集中する時間を持ちたいと考えています。

このようなキャリアプランを思い描くとは、麻酔科医1年目の初めの頃には予想していませんでした。大学でのレジデント生活は1年間と短いものでしたが、日々の臨床や勉強会のみならず、自分のキャリアについて考えるきっかけをいただいたことそのものが、私にとって財産だと感じています。

野木村 茜(2018年7月)